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みそしるキャベツにはすりおろし大根

社会不適合者の独り言

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ゆきのなくこえ


鏡の中の小さな光
小さな指と幼い僕
幼い僕は臆病で
鏡の前で 涙をこぼす


  †††††


空には灰色の雲が敷き詰められ
木々は彩りを失っている
色があるとするなら、このかじかんだ指か。

街は死んだように沈黙し
寒さのせいか、道行く人は口を閉ざしている
凍て付く風は頬を叩き
まだ昼過ぎだというのに辺りはどんよりと暗い


いつ雪が降り出してもおかしくなかった


僕は雪が好きだ
空から舞い降りる雪が

灰色の空が白い水玉模様になって
積もれば世界を少し明るくしてくれる
わずらわしい喧騒を吸い込んで
雫のような静寂をもたらしてくれる

そんなことを考えていると
粗大ゴミ置き場に小さな女の子が座っているのが見えた

赤いランドセルをゴミの中に置き去りにして
冬にしては薄い服で、膝を抱えて震えている


「何してるの?」
僕は女の子に尋ねてみた

女の子はゆっくりとこちらを向き、乾いた唇から言葉を落とす



「私を捨てるの。」


彼女は寂しげにそう言うと
吐き出した白い息が、冷たい空気の中に溶け込んでゆく様子をぼんやり眺めていた

「誰が?」
そう僕が彼女に尋ね返すと彼女は少し驚いた顔をして、すぐに微笑んだ



「私の話聞いてくれる?」

彼女は少しだけ首をかしげ
僕は小さくうなずいた



「私は今お母さんと2人だけで暮らしているの。」

ついに雪が降り始めた。

「クラスメートの男子が時々そのことからかってくるけど、私は全然平気だった。だって私には大好きなお母さん一人いてくれたら十分だったもん。」

雪は少しずつ積もっていく。

「でも、お母さんは寂しそうだった。一人の時は、辛そうだった。」

彼女の頬に当たった雪は溶けて。

「でもね…。最近お母さんちょっと明るくなったの。最近お母さんの同級生のおじさんがよく遊びに来るようになったから。」
彼女の肩は白くなっていく



「お母さんは内緒にしてるつもりみたいだけど…私わかってるの。お母さんその人のこと好きなの。」

彼女は諦めたように笑う。



「私も嫌いじゃなかったんだよ。私の新しいお父さんになるのかなって。でもね…。」



「私、聞いちゃったの」




「君とは結婚出来ない。他人の子供なんて育てられない。」



「って。」
小刻みに震えているのは寒さのせいか。

「だから、私は捨てるの。私を。」
自分で自分の背中を押すかのように。


「そしたらお母さんきっと幸せになれるもん。私お母さん大好きだから幸せになって欲しいんだ。」
彼女の頬は次第に赤みを帯びてきていた。

「だから私は…」
彼女が言いかけた時、鋭い声が響いた


「雪乃!!!」


その声がしたほうを振り返ると、少し慌てた様子の女性がこちらを見つめて立っていた

「お母さん…」
小さな声には、どこか嬉しさをにじませて。

その女性はカツカツと女の子に近付いて、
力強く抱き締めた

「どうして家出なんてするの?」
お母さんは女の子を抱き締めたまま語りかけるようにささやく


女の子は少し笑ったように見えた。

そして何かを決心するように、


「…っ。」
ドンッ…と女の子はお母さんを突き放し、言い放つ
「私は私がイラナイ!私がいなければお母さんは幸せになれるもん!」
そこには確固たる意思を持って


一瞬の沈黙

お母さんはすっと立ち上がり、
女の子の頬をたたいた

「嘘でもそんなこと言わないで!!あなたがいない幸せなんて要らないわ!!」

女の子の頬がみるみる赤くなる

女の子は涙を堪えながら言う。
信じられない!そんなどこかのくだらないドラマみたいなセリフ!」


パシッ
もう一度乾いた音が響く
女の子の頬から涙が零れる


「私はあなたになんて言えばいいの……?私はあなたのほうがずっと大事なの……。」
お母さんの頬にも涙がつたっていた


「…私、お父さんの娘だもん。」
女の子はうつむいて、力なくもらした

「雪乃は私の娘よ…。そうでしょう…?」
そう言ってお母さんは娘をもう一度抱きよせる
今度は大事に、優しく

「お母さん…」


こぼれ落ちた涙はどちらの涙か
或いはふたり分のなみだか


いずれにせよ、僕は居るべきじゃない
そう思い、帰りだそうとした時

「待って!」
女の子が駆け寄ってくる

「話を聞いてくれてありがとう」
そう言って女の子は手をさしのべてきた
「いや、僕は何もしてないよ…」
そう言いながら彼女とお別れの握手を交わそうとした


それは間抜けなほど"すっ"という言葉がお似合いだった


お互いの手のひらは交わることなく"透けた"。

彼女は残念そうに苦笑いし、
僕も同じように苦笑いした

それはなんとなく気付いていたことだった
女の子は幽霊だった

「…じゃあね」
彼女は開いていた手を握り直し、振り返ってお母さんの方へ走っていく。


「雪乃…何してたの…?」
「なんでもないよ。おかあさん」
彼女はそう微笑んで、お母さんとしっかり手を繋いで家へ帰っていった



僕もしばらく自分の手のひらを眺めた後、家に帰ることにした

僕はこの出来事を家に帰ったらすぐに日記に書いておこうと思う

一生忘れない思い出にするために


明日学校で友達に話してみようか

誰か信じてくれるだろうか


体が半透明で足がない僕たちとは違う世界の、とある幽霊親子のお話…



そう思いながら僕は、温かかそうな彼女達の後ろ姿を思い出していた





「ねぇ…お母さん」
「なぁに?雪乃」

「お母さんは幽霊って信じる…?」


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コメント

どうも、高3の頃に書いた黒歴史的な小説でございます。

感想など頂けるとありがたいです。

機会があればKUCCでコミカライズしようと思ってたのですが、どうやらなさそうなので、小説のままうpしました。

  • 2010/01/21(木) 11:13:38 |
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  • †燕† #-
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